当時僕がまだ10代の頃、弊社工房に御嶽(ウタキ)で願い(ニガイ)をしているという宮古島のおばぁが訪ねてきました。
おばぁ:あんた、これを作ってくれんか〜?(ボロボロに欠けたお椀を持ってきた)
僕:これは何ですか??
おばぁ:これは、御嶽(ウタキ)で神様にお供え物をするときに使う「大皿(ウプザラ)」と「小皿(イミザラ)」というものだよ。これに神酒やお米を入れてニガイをするんだよ。
※それは数十年以上は使われているだろう、かなり年代物でどんぶりほどの大きさの大わんと、お茶碗ほどの大きさの小わん。すべてテリハボク製の木器でした。。。
僕:なんでこれはわざわざテリハボクで作ったんですかね〜?
おばぁ:なんでかね〜。わからんけど、昔から御嶽で神様にお供え物をするときは、必ずこのテリハボクで作ったこの大皿・小皿であったんだよ。そう伝えられてきたけど、今となってはもう作る人もいなくなってるから、あんた達なら作れるかね〜と思って持ってきたよ。
※当時弊社では、割に合わないという理由と商品製作に悩んでいたことで食器作りへの取り組みは出来ずにいました。
僕:ごめんよおばぁ。今はもうお皿は作っていないさぁ。でも、修復なら出来るから元どおりに治すことは出来るよ。 おばぁ:本当は新しく作って欲しかったけど、でも良かった。今は誰に聞いても作っている人がいなかったから助かるよ〜。
※そのときそれを作れなかったのが、とてもとても悔しかったのを今でも思い出します。。
いつかこれを、何かの形で現代に蘇らせることは出来ないのか。後世に伝える術がないのものか。ずっと悩んでおりました。 テリハボクは、水に強く、国産材では珍しいくらい色鮮やかな木目と強靭な木質を持っているが、乾燥に時間がかかる、加工がしづらい、木の狂いが激しい、材木屋には売っていないため手に入れにくい、といった理由から沖縄の木工家の中でも避けられつつあった存在でした。
デザイン性の高さ、良い木目の表現、かつ変形しにくい形状を研究し、気持ち良い手触りや長年使える強い耐久性を実現させるための塗料の研究と、数年に及ぶ試行錯誤を繰り返し。。。
大量生産で作り、使っては捨てるの大量消費。「使い捨て」で溢れる世の中に逆らい、良いモノを末長く大切に使って欲しい。宮古島の伝統文化や自然を守りたい・伝えたい。宮古島で育った木で、宮古島の職人が作り、それを宮古島から全国・世界へ発信することで、島を盛り上げたい。
そんな地元を大切にしたいという「島の若者の想い」と「老舗木工所の技術」との巡り合わせから、テーブルウェアブランド「Teriha(てりは)」が誕生しました。
製作者:与儀 昌樹



